もも福ブログ
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【奈良の日本酒】創業300周年を記念し『風の森を醸す』は出版されました。

ポンと音を立てて開栓です。

グラスに注がれた『風の森』は

ピチピチと音を立てています。

しぼりたてのフレッシュな味わいが魅力の

奈良を代表する人気銘柄です。

風の森を醸す油長酒造の創業は

享保4年(1719年)。

この本は創業300周年の記念に

出版されました。

『風の森』ができるまでのお話や、

日本酒と油長酒造の歴史が

わかりやすい言葉で伝えられています。

『風の森』が生まれた場所

風の森は、平成10年(1998年)に

現当主の父、12代目

山本長兵衛氏の手により産声を上げます。

油長酒造は当時、大手酒造メーカに

お酒を卸す割合が高く、

地元に商圏を持っていませんでした。

そこで、地元の方に飲んでもらえる

おいしいお酒を造りたいと考え

生まれたのが『風の森』です。

普通であれば、蔵元や蔵人しか

口にすることのない、

しぼってそのままのお酒

『無濾過無加水生酒』を

提供することをコンセプトに打ち立てました。

御所市の南に風の森峠はあります。

このあたりで生産されていた

秋津穂米を使って造ったお酒が

『風の森』と命名されます。

まずは、地元の方に喜ばれる

おいしいお酒をめざしたのが

『風の森』のスタートです。

菩提酛づくりと油長酒造

正暦寺は、奈良市と天理の山あいの

自然豊かな森の奥にあります。

秋には錦の里と呼ばれるほど、

紅葉が美しいことでも知られています。

第3章では、正暦寺の住職大原弘信師と

油長酒造の蔵元の対談でお話がすすみます。

  • 正暦寺の成り立ちと酒造りのかかわり
  • 伝承の仕込み水から奇跡の乳酸菌の発見
  • 正暦寺が「日本酒発祥の地」と言われる理由
  • 菩提酛の復活秘話
  • 寺院醸造再興が水を守る

 

なかでも興味深いのは、

正暦寺が日本酒発祥の地といわれる

理由について言及されているところです。

「菩提酛」という酒母の製造工程が江戸時代の初期に成立した酒造技術書『童蒙酒造記』に明記されています。その特徴はあらかじめ乳酸発酵による「そやし水」をつくることです。そして、それが1400年代に編纂された『御酒之日記』にある「菩提泉」の製造方法と正に一致しているんです。「菩提泉」というのは当時の正暦寺で醸されていたお酒です。

酒母という概念がこのころに

確立された証といえます。

 

平成8年(1996年)に

酒造メーカー15社の有志が中心となり

「奈良県菩提酛による

清酒製造研究会」(2021年現在は8社)が

結成され研究に本腰を入れます。

奈良の酒に注目し、その歴史をひもとき

現代に菩提酛づくりを再興しました。

奈良のお酒が果たしてきた役割を

理解するための最も有効的な取り組みが

菩提酛研究会なのでしょう。

日本酒の歴史

奈良は清酒発祥の地。室町・戦国時代に、

奈良の寺院において

諸白(もろはく)と呼ばれるお酒が

世に生まれ、現代のお酒造りにつながる

技術革新がこの時代に確立されます。

諸白とは、麹米、掛米ともに

白米を用いて造ること。

室町時代までは、麹米には玄米、

掛米には白米をもちいた片白と

呼ばれるにごり酒が一般的でした。

そうして、諸白を確立していく過程で

5つの技術革新を生み出します。

  • 精米(白米の使用による酒質の向上)
  • 上槽(酒質の安定化)
  • 火入れ(酒質の安定化)
  • 酒母(生産性向上)
  • 段仕込み(生産性向上)

奈良が清酒発祥の地といわれる理由は、

奈良で現代の清酒醸造技術の基礎が生まれ、

各地へ伝わり、さらに各地で進化し

広がっていったということが、

様々な文献により明らかだからです。

参考文献

  • 御酒之日記
  • 多聞院日記
  • 童蒙酒造記